知らなければよかった

もし異常が見つかったら、知らなければよかったと思うのではないかと。
たとえば、がんの初期症状が発見されたとします。

今まで元気に暮らしていたのに、病気だと知った瞬間から不安がつきまといます。
あるいは、「あなたは将来、この病気になるリスクが高いです」と言われたらどうでしょう。
まだ発症していないのに、ただの可能性を知らされただけで生活が制限されるのは、なんとも息苦しく感じます。

私が最近、「知らなければよかった」と思ったこと。
それは、日本の住宅の基礎についてのことです。

コンクリートが一面に打たれているので、いかにも頑丈そうに見えます。
でも、実際に構造計算をすると、ベタ基礎は基礎梁の高さが低く、他の基礎より強度が不足しています。
また、補強されるのはスラブ筋ばかりで、本来基礎の強度に必要な基礎梁の主筋より多く使われているのも変です。
つまり、「補強しているから強い」と思われていますが的外れな補強がされているのです。

ベタ基礎はこうした余計な補強が必要なため、無駄に鉄を多く使います。
鉄を使えば、その分だけ炭素排出量も増えます。

知らなければ、「ベタ基礎だから安心」と思えたのに、全くの正反対であり、新しい常識に頭を書き換えなければいけないようです。
知らなければ、余計な不安を抱かずに済んだかもしれません。
でも、知ったからこそ、より良い選択ができるともいえます。
健康も住宅も、表面的な安心に惑わされず、本当に大切なものを見極めることが必要なのかもしれません。

おうちのはなしNo.319 Helth&Sanabilyより